【作品解説】YPP CALENDAR ができるまで
2005年に10色印刷機「HEIDELBERG SPEEDMASTER SM-102-10-P6-S」を導入したのをきっかけに取り組んできた自社ポスターカレンダーシリーズも19年目を迎えました。
これまでは10色印刷機を活用し、「滑らかで広い色域再現」と「製版技術の可能性」を追求してきました。本年よりカレンダーの名称を「YPP 10Colors calendar」から「YPP CALENDAR」へと変え、印刷機・手法・色数の制約を取り払い、グラフィックデザインの再現により柔軟に取り組んでまいります。
2023年4月、これまで18年に渡り本シリーズを牽引してきた弊社プリンティングディレクター熊倉桂三が急逝致しました。これまでの氏の功績と受け継がれた想いを胸に、本カレンダーを皆様にお届けしたいと考えております。
デザインはグラフィックデザイナーの橋詰冬樹氏(TOR DESIGN)、プリンティングディレクションは弊社西谷内和枝が担当しました。熊倉の想いを引き継ぎ作り上げた2024 YPP CALENDARをお楽しみいただければ幸いです。
色彩を感じる黒
2024 YPP CALENDARは「地層」をイメージしたデザインです。色域はデザイナーとプリンティングディレクターで選定したキーカラーを軸に、各月の月の満ち欠けを基準として明暗と諧調表現を行っています。印刷では弊社でも初となるカレイド+RGBの印刷設計を行い、より高い透明感と色域を追求しました。
また、今回のカレンダーではデザインコンセプトの一つである「月の満ち欠け」の「暗」の部分の表現を特に意識しています。これまで熊倉桂三が社を挙げて取り組んできた「黒」への追求を、本カレンダーでは「黒の中の諧調表現」として再現しました。単独で見ると黒に見える色の中にも様々な色の要素が含まれています。1%単位で調整した多彩な「黒の表情」を感じていただければ幸いです。
PDの葛藤と新たな試み
PD 西谷内和枝:
今回2024 YPP CALENDARを熊倉さんの後任として担当するにあたり、かなり手探り状態でスタートしました。
橋詰さんのデザイン案を見ながら色彩、いわゆるモニターの色(RGB)と印刷の色(CMYK+RGB)のギャップを埋めるにはどうすればいいのかディスカッションを重ねるうちに、ふと以前担当した図録で広演色インキを使用したことを思い出しました。「2024 YPP CALENDARであの図録くらいの彩度が出ればいいなぁ」という気持ちと「上手に印刷設計ができるのか」とか「RGBインキがあるからカレイドじゃなくても良いのでは?」などなど自分の中で様々な葛藤がありました。
ある時、昨年の2023年カレンダーと睨めっこをしていると、自分の脳内で「やってみよう!」と熊倉さんの声がしました。いつも印刷の可能性を信じ、何事にも臆せずにチャレンジしておられた熊倉さん。その言葉に背中を押されカレイド+RGB+BK2+銀2の印刷設計をしました。
校正途中、黒のグラデーションの中の色味が普段10色機で使用しているアカスミインキの影響なのか、赤茶けた印象になりました。そこで、急遽アカスミインキをアオスミインキへと変更。結果、黒の中の色味を製版での画像調整と印刷のインキ両方から追求することにより「月の満ち欠けの明部分の高彩度さ」「黒の中の多彩な表情」の表現を可能にしました。
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2024 YPP CALENDAR
企画 ︱ 山田康智
製版・印刷 ︱ 株式会社山田写真製版所
プリンティングディレクション ︱ 西谷内和枝
印刷機機長 ︱ 谷井二朗
グラフィックデザイン ︱ 橋詰冬樹(TOR DESIGN)
進行 ︱ 澤崎達雄
画像変換ソフト ︱ サカタインクス株式会社
網点形状 ︱ FMスクリーン+AMスクリーン
印刷機 ︱ HEIDELBERG SPEEDMASTER SM-102-10-P6-S・10色印刷機
用紙 ︱ ミセスB‐Fスーパーホワイト〈46〉180㎏
インク ︱ サカタインクス株式会社 東京インキ株式会社
10Colors
●Cyan(Kaleido)カレイドシアン
●Magenta(Kaleido)カレイドマゼンタ
●Yellow(Kaleido)カレイドイエロー
●Black1ブラック1
●Black2ブラック2
●Redレッド
●Greenグリーン
●BlueVioletブルーバイオレット
●Silver1銀1
●Silver2銀2